「語前語後」(安野 光雅)

 

たまには軽い文章を読んでみようと思って。

ひとつが5行ぐらいからなるエッセイ集。

最近で言うならば、twitterでのつぶやき集みたいなイメージ。

それにしても、デザインとかアートの世界で成功している人は、
どうしてここまで文章が上手いのだろうといつも思う。

凝っているわけではないのだけれども、なんというか、
センス、そうセンスがある。

グラフィックというのは、言葉を使わずに思いを伝える仕事だから、
言葉で内容を伝えるぐらいは、どうってことないのかもしれない。

本文中、「がんセンター」についての一節で、
そこの受付がいつも混んでいるということを紹介したあとの部分、

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これはそこの「受付」という断面で切り取った人生の一駒だが、
この断面は「受付」に限らない。
校門という断面もあれば、駅も産院も式場も、
およそ人生のいたるところに同じ断面が用意されている
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人生における要所要所を「断面」でとらえるという発想が斬新で、
さりげないけれど、こういう表現はなかなかできるものじゃない。

断面の前と後ろには長く伸びる人生があるわけだが、
それを直接言わないでも、「断面」という一言で、
トンネル状の人生というものが、想起できるのである。

見習うべき名文だと思う。