ダーウィン、ポーリング、ケルヴィン卿、ホイル、アインシュタイン、
5人の一流科学者たちの「失敗」について紹介した本。
失敗といっても、いわゆる「ミス」と呼べるものは、
ポーリングの例ぐらいなもので、
残りの4例は、時代的にそのように思い込んでしまうのも仕方がない、
といった内容であり、
だから、
この本の主眼は、「なぜ失敗したのか」ということではなく、
「なぜ失敗を認めようとしなかったのか」という点であって、
そこに科学者の信念というか執念がみてとれるのである。
例えば、地動説を唱えておきながらも、
惑星の軌道は真円であると思い違いをしていたコペルニクスような例は、
「偉大なる失敗」であったには違いないが、
死ぬまでその誤りを指摘されることはなかったため、
この本で扱えるような題材とはなりえなかったのであろう。
ダーウィンの場合は、当時、遺伝学が発達していなかったゆえの失敗、
ケルヴィン卿の場合は、地球内部の流体部分の存在を認めなかったための誤解、
ポーリングの場合は、化学知識における(信じられないような)初歩的なミス、
ホイルの場合は、「定常宇宙論」の誤りを最後まで認めなかったこと、
そしてアインシュタインの場合は、宇宙定数を導入したことよりも、それを削除してしまったこと、
ひとことで「失敗」といっても、
5人それぞれパターンが違うこともあり、
なにゆえに失敗するのか、失敗したらどうするべきなのか、
といったことを、いろいろと考えさせてくれる。