「地球生命は自滅するのか?」(ピーター・D・ウォード)

 

地球と生物は、生物が永続しやすいように、
共に最適な環境を築いてゆく、という「ガイア仮説」に対し、

著者は、
生物は自らが滅びるように地球環境を変えてしまっているし、
地球はそれを修復してくれるものではない、
という「メデア仮説」なるものを主張している。

この点に関しては、僕も賛成である。

地球に限らず、おそらく一般論として、

惑星は、生物が誕生可能な環境を用意してくれはするものの、
それが進化し、永続することに対しては、何のフォローも行わない、

のだと思う。

地球環境が、いかに生物にとって都合の悪いように変化してきたか、
については、この本に挙げられている例をみれば十分だろう。

ただ、著者は、生物の最大の悪行は「二酸化炭素を減少させたこと」としているが、
一方で、我々ヒトが二酸化炭素を増加させていることも認めており、
その関係について踏み込んでいないところが、非常に歯がゆい。

そういえば、子供の頃、夏になるとよくカブトムシを飼っていた。

容器に土を入れて、毎日霧吹きをし、エサも欠かさず、
おそらく彼らにとって「天国のような」環境を作ってあげていたにもかかわらず、
決して長生きすることはなかった。

地球上の生物も同じなのかもしれない。

ただ、この本で著者が主張しているのは、
生物は永続できない、という悲観論ではなく、

そのような状態を変えることはできるのは、
我々ヒトだけである、という希望である。
(ただ残念なことに、「では我々は何をすべきなのか」については、
あまりにも少ししか書かれていない。)

最後に、ひとつだけ肝に銘じておきたいことは、

地球に生命が生まれたことも、ヒトまで進化してきたことも、
決して必然ではなく、むしろ奇跡に近いことであり、

そうなることを、地球が望んでいるわけでもなく、
シナリオはいつでも最悪の方向へと書き換え可能である、

ということだ。

いや、すでに最悪の方向へ進んでいる可能性の方が高い。