表紙がちょっとアレなので、
電車で読むのがちょっと恥ずかしかったけれども。
この本の論旨を端的にまとめるとこうなる。
1.生物の絶滅には周期性がある
↓
2.周期的な絶滅の原因は彗星である
↓
3.大量の彗星を地球に降らせたのは、
未発見の太陽の伴星(ネメシス)である
科学とは、仮説を立ててそれを証明してゆくものであるが、
残念ながらこれは、1~3のすべてが「仮説」である上に、
しかも1~3の因果関係も「想像」である。
つまり事実かどうか分からない事柄を、強引に因果関係で結びつけて、
あたかもあり得る「事実」であるかのように見せるのは、
SFとしては上出来であるが、科学と呼ぶには物足りない。
観測されている多くの構成が連星であることを考えると、
太陽に伴星があるという仮説は、個人的には面白いと思っている。
ただ、何もそれを生物の絶滅に結び付ける必要はないし、
何よりもその伴星自体が観測されていないのだから、
どうにもこうにも仕方がない。
そして仮説というのは、
それがなければ辻褄が合わない場合に立てるのが通常であるが、
現在の太陽系を考えるにあたっては、
別に「ネメシス」の存在がなければ辻褄が合わないことはないし、
そもそも、
そのように考えられるからといって、必要ではない存在を仮定することは、
科学の大原則(「オッカムの剃刀」)に反することである。
著者が述べているように、
科学の進歩の第一歩には、「想像」や「空想」があったことは事実であるが、
それを証明できるか、あるいは証明するための手続きをとるかが、
科学とSFとの境目でもある。