数をかぞえるだけなら、おそらく類人猿にもできるだろう。
ヒトが科学という武器を手に入れ、文明を築き上げることができたのは、
数をかぞえることに加えて、
「周期性」を発見し、理解したことにあると思う。
日の出・日の入の数をかぞえ、
「季節」という概念を生み出すこととともに、農業を発展させ、
農業は支配者を生み、支配者は暦を作らせることで、
さらに統治を強力にする。
つまり、文明における最初の「周期性」とは、まさに天体の動きそのものであり、
天文学こそが、科学の始まりだったといえる。
天文学といえば、反射的に、ギリシャ神話やプトレマイオスの名前を思い浮かべる。
それはそれで間違いではないが、
我々の生きる東洋において、それがどのようにして生まれ育ったのかを知ることは、
必要でこそあれ、無意味ではあるまい。
東洋での、そして日本での天文学の歩みを知る上で、
これほど要を得た本は他にはないだろうと思わせてくれる、良書である。
こういう本を高等学校の教科書にすれば、
我が国における科学愛好者の人口も増えるのではないかと思うのだが。