半藤一利さんが、
漱石先生の義理の孫だということは、
これを読んで初めて知った。
そういう関係であろうとなかろうと、
著者の漱石作品への愛着が伝わってくるエッセイで、
漱石好きとしては、
もっと早く読んでおくべきだったと悔やまれる。
漱石作品ではBGMが効果的に使われている、
とか、
「それから」には百合の花の香りが濃厚に立ち込めているが、
漱石は実は鼻が悪かったのではないか、
とか、
若き日に兵役から逃れたことが、
神経衰弱の原因だったのではないか、等々、
漱石研究家や義理の母(漱石の娘)の話などを交えながら、
尽きることのないエピソードが語られてゆく。
先日「明暗」を読み終えて、
ひとまず漱石再読はひと区切り、
などと書いてしまったけれど、
この本を読んだら、
俄然また漱石が読みたくなってきた。
「キミ、とりあえず読むのはひと区切り、
などとエラそうなことが言える身分かね?」
と、漱石先生に叱られるのではないかという気もしてくるが、
まぁ、あの世から幽霊にでもなって出てきてくれたら、
そんな光栄な話はないけれど。
ただ、この本は、「坊ちゃん」「猫」「草枕」など、
随分と初期の作品に偏っているな、、と思っていたら、
なんと続編があるではないか。
これはまた近いうちに読んでみなくては。
でも続編を読んだら、
間違いなく漱石読書が復活するだろうな。
今はとにかく、「猫」を読み返したい。