「23区格差」(池田 利通)

 

ちょっと息抜きにこういう本も読んでみたくなった。

今までに住んだことがある区は、
中野区、渋谷区、新宿区、港区、世田谷区、
中央区、北区、板橋区。

大学に入るまではずっと中野区の実家だったし、
渋谷区のように同一区で何回か引っ越したこともあるから、
たぶん、3年に1回ぐらいのペースで引っ越しをしている。

引っ越すときは、「どのあたりのエリア」ということは気にするけれど、
「どの区か」というのはほとんど気にしない。

例えばいま住んでいる成増は板橋区ではあるが、
少し歩けば埼玉だし、

初台に住んでいるときは、
渋谷区ではあったが新宿エリアという感覚の方が強かった。

自分は住んだことはないけれど、
品川駅は品川区ではなく港区だったり、
目黒駅は目黒区ではなく品川区だったり、
要するに、「区」などという行政区分はどうでもよく、
人は「街」に惹かれて住むのである。

まぁただ、一応23の区に分かれている以上、
様々な比較をしてみたくなるのも分かる。

逆に言えば、この本はそれぐらいの気持ちで読むべきで、
ここに書かれていることを何かの判断基準にしよう、
などと思うと失敗するに違いない。

たとえば、区内の病床数を比較するくだりがあるが、
別に入院するのは、自分が住んでいる区の病院とは限らない。

むしろ、他区であっても評判のよい病院を探すのが通常である。

だから、ある区の病床数がNo.1だといっても、
それが理由でその区に住もうと思う人はいないだろう。

そもそもデータには、
恣意的にいろいろな見せ方ができるという危険性がある。

例えば、「区民全体での平均所得」だと第5位だが、
「40歳以上の労働者における平均所得」だと第1位である区があったとして、
それをどう評価すればよいのか。

さらにそこに性別やら、あるいは出身地などのデータを掛け合わせると、
その結果は、いかような解釈も許すことができてしまう。

このようなトリックは、
学問の分野でも往々にして行われていることであり、

ましてや「23区のデータ」のような、
かなりの主観が混入しうる題材であれば、
その内容はほぼすべてが、眉唾だと思った方がいい。

大切なのは、加工前のデータをもとに、
自分でどのような結果を導くか、である。

ただ、何の必要性もなく、
我々がそのようなローデータを手にすることはないから、

このような本を読んで、
いろいろな角度から物事を眺める習慣をつけることが大事なのだと思う。

他人によるデータの解析はまずは疑ってかかれ、
これが教訓である。