「恐怖の哲学 ホラーで人間を読む」(戸田山 和久)

 

あらかじめ言っておくと、僕はホラー映画がキライ。

というか、血を見るのが嫌なんだよね、基本的に。

まぁでも、ごくたまーーーーーに、すごくたまーーーーに、
見ざるを得ないときがあって、

だからロメロ監督とかリスペクトしてるし、
「スクリーム」なんかも、映画としてよく出来ていると思っている。

まぁでも、基本的にイヤなわけですよ、ホラーは。

じゃあ、その「イヤ」という感情はどこから生まれるのか。

「怖い」って何なのか?
「気持ち悪い」とは違うのか?
ヘビを怖がるのと、フレディを怖がるのとは違うのか?

そういった、「恐怖」にまつわるギモンを、
ホラー映画をベースに、哲学的・心理学的に解明しようというのが、本書の主題である。

400ページ以上あって、新書としてはかなり分厚い本なのだけれど、
よくまぁ、ここまで書けたもんだと、著者に敬礼。

いやそれ以上に、そこまで語らせるホラー映画というジャンルをリスペクト。

ただ、ちょっと内容が心理学?寄りになりすぎていて、
理屈っぽいというか、細かすぎるというか、
学術論文じゃないんだから、そこまで綿密に論理展開しなくていいよ、って箇所が結構あって、
正直、理解が難しい。

難しいことを語りつつ、思い出したようにホラー映画のネタを突っ込んでくるんだけど、
もっとホラー映画ベッタリでも良かったのではないかと思う。

それと、もっと根本的なギモン、
例えば、エイリアンとゾンビとレザーフェイスとでは、
観る側が感じる「恐怖の質」みたいなものは絶対違うと思うのだけれど、
そういうところをもっと端的に説明して欲しかった。
(たぶん、本書のどこかでは説明されているのだろうけれど、
少なくとも僕には理解できなかった・・。)

あとは、血を描くことのないホラー映画は可能か、とか、
「プレデター」がホラー映画扱いされないのはなぜなのか、とか、

そういう「ひねり」を加えた視点からホラー映画を見直すと、
もう少し違ったアプローチができるような気もする。

ともあれ、ホラーというジャンルを正面から切り込んだという意味では、
なかなか意欲的な一冊かな。