「地球はもう温暖化していない」(深井 有)

 

まず始めに、地球温暖化に対する自分のスタンスを述べておくと、
僕はもともと地球科学を独学していたこともあり、

地球の気候は何千万年の単位で大きく変動する一方で、
数百年単位でも上下をすることは知っていたので、

「地球が温暖化している」というマスコミの騒ぎを耳にしたときも、
動揺しないどころか、信じるに値しないものだと思っていた。

さらに、アル・ゴアあたりが声高にそれを主張するのを見てからは、
地球温暖化問題は、政治的に利用されているにすぎないものだと、
半ば馬鹿にしていた。

そもそも気候変動というのは、金融相場のようなもので、
株価を日足でみるのと五分足で見るのとでは全然様相が異なるのと同じく、

ここ数年の気温が上昇(または下降)しているからといって、
数十年、あるいは数百年単位でみたときの気候のトレンドが、
それと同じである、とは言い切れないのである。
(株や外為で損をしたことがある人なら実感が湧くだろう)

でもある時期から、僕の考えは変わった。

地球が温暖化している・していないにかかわらず、
化石燃料を燃やし続けて、環境に良いはずがない、と。

環境というよりかは、エネルギー問題というべきかもしれない。

もちろん、過去の地球において、
現在以上に二酸化炭素濃度が高かった時代があるのは知っていたけれども、

しかしそれは決して、化石燃料を燃やした結果ではないので、
地球が未知の問題に直面していることは事実なのだと思い、
いまに至っている次第である。

さて、この本だが、
著書は、二酸化炭素による温暖化自体は否定していない。

ただ、それより以上に、
太陽活動によって地球が冷却化していると述べている。

そのメカニズムとしては、
太陽活動が停滞することで、太陽風による宇宙線の防御が甘くなり、
宇宙線を浴びた地球の低層には雲が生じ、
結果、地球の温度は下がる、と説明する。

正しいかどうかの確証はないが、
論としてはエクセレントであるし、十分な裏付けも提示している。

少なくとも、地球温暖化による環境危機をヒステリックに唱える陣営よりは、
よっぽど科学的でもある。

さらにこの本の興味深い点は、

地球温暖化問題は、EU主導による政治的プロパガンダであり、
世界の先進国の中でいまだに騙され続けているのは日本だけであって、

「分かりやすいキャンペーン」によって、
「国民的熱狂」を生じやすい日本人に対し、
警鐘を鳴らしていることである。

例えば、この本に何度も登場する「クライメートゲート事件」。

これは、地球温暖化がインチキであることを暴露した関係者のメールが、
何者かによって公表されてしまった事件なのであるが、
これは、まさにいま問題になっている「パナマ文書」事件を彷彿とさせる。

違法ではないが、倫理的に大きな問題だとして、
海外では大騒動になっている「パナマ文書」であるが、
日本では政府もマスコミも黙殺しているに等しい。

「クライメートゲート事件」においても状況は同様で、
この事件をきっかけに、
欧米先進国の地球温暖化への関心は一気に低下したのに対し、
日本では逆なのである(というか、この事件自体、日本ではほとんど知られていない)。

そう、まさに、「地球温暖化」という問題は、

日本人の鈍感さ・信じやすさ、マスコミのレベルの低さ、
政治家の貧弱な科学知識、

などをあぶり出すにはもってこいのテーマとなっているわけであり、
金銭的にも、日本は世界のカモになっているのだと、
本書は断言している。

話は変わるが、僕はこの本からひとつのヒントをもらった。

地球全体が巨大な磁石であることは今更言うまでもないが、
だとするならば、太陽磁場の影響を大きく受けるはずで、

もしかしたら、太陽磁場の周期を分析することで、
巨大地震の予測をすることはできないのだろうか。

地球は閉じた系ではなく、
宇宙に向けて開かれた系であると考えることで、
科学の多くの分野で新たな発見が相次いでいる。

もしかしたら、地震についても地球外の影響を考慮することで、
新たな地震学の一歩を踏み出すことができるのかもしれないが、
果たしてどうなのだろう。

手元の資料で、太陽活動のサイクルと地震発生データを重ねてみたりしたのだけれど、
残念ながら、いまのところ納得がゆく結果は出ていない。

もう少しチャレンジしてみたい。