「宇宙創生に挑むパイオニア」(NHK取材班)

 

ホーキング、ビレンキン、ワインバーグ、佐藤勝彦、ダイソンといった、
宇宙物理学の”スター”たちの、各理論の簡単な紹介と、
貴重なインタビューで構成されている。

今からもう25年も前の本で、登場する人物の幾人かは他界したけれども、
その内容は不思議なほど古びていない。

つまり、細かな修正は加えられてきたものの、
当時の理論がまだ生き永らえているということだ。

その後、記憶に新しいところでは、
ヒッグス粒子や重力波の捕捉など、
新しい発見が、彼らの学説をより強固なものにしてきた。

だが正直なところ、宇宙物理学の分野では、
まだ理論が観測を大きくリードしている。

特に「コスモゴニー」の分野については、
そもそも実証が難しいものがほとんどだ。

しかし冷静に考えてみれば、
我々人間が、宇宙が生まれた瞬間のことを考え、
さらには宇宙誕生後、
何兆分の1の、何兆分の1の、さらに何兆分の1秒後以降のことは
綿密なストーリーまでも語れるようになったというのは、
凄いことでもあり、同時に恐ろしいことでもある。

我々に近いとされるチンパンジーやゴリラでも、
宇宙誕生のことはおろか、
なぜ太陽は輝いているのかということについてさえも、
考えたことはないに違いない。

まるで膨張する宇宙を追いかけるかのごとく、
人間の脳は進化を続けているのであり、
その最先端をゆくのが、この本で紹介されている頭脳たちなのである。