まずはオープニングで鳥肌が立った。
一面の雪景色を背景に、磔刑のキリスト像がアップで映されるのだけれど、
そのシーンのたっぷりとした長さと、そこで流れるバスーンによる不気味な旋律が、
いかにも思わせぶりというか、これから始まるストーリーの世界観をズバリ表していて、凄い。
(ブラム・ストーカー原作の「ドラキュラ」の英語版を読んだときに、
同じような感覚だったかもしれない。
馬車で向かった先が異世界だったというのは、
19世紀的な冒険譚の典型なのかもしれない。自分としては。)
このシーンだけで一時間あってもいい、と思えるぐらいだったのだが、
帰って調べてみたら、こないだのアカデミー賞で作曲賞を受賞していたと知り、納得。
時代設定は、南北戦争直後のアメリカ。
猛吹雪の中、山小屋で一緒に過ごすことになった、曰くつきの8人。
誰も信用できない状況で、ついに殺される者が出るのだが、
観てる側にも犯人は分からず、前半は探偵小説を読むかのような雰囲気で進む。
後半は、いかにもクエンティン・タランティーノの世界で、
壮絶な殺し合いが始まり、頭は吹っ飛ばされるは、首吊りにはされるは、
まさに、狂気が支配する地獄絵図となる。
日本では18禁指定なので、それなりのエログロ感なのではあるが、
でもそこはタランティーノなので、脚本がしっかりしているために、
そういうのもアリかな、と思えてしまう。
こういう設定の映画だと、役者の演技力がモノを言うわけだけれど、
ティム・ロス、カート・ラッセル、サミュエル・L・ジャクソン、ジェニファー・ジェイソン・リー
といったあたりの演技はさすがに安定感があった。
個人的には、サミュエル・L・ジャクソンかなぁ、
いいのかよ?というぐらい黒人差別語が飛び交う、
この時代独特の世界観に妙にハマってたというか、
まぁこの人の場合は、シリアスな演技が向かない分、
どことなく漂うコミカルな雰囲気が、この作品にはピッタリだった。
「予測不能なハラハラ感」。
これがこの映画を表現するには、ちょうどいいかな。
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