少し前に書いた、「泰階(太階)」についての記事、
「諸橋大漢和」を手に入れたらもう一度調査し直そう、としていたのだけれど、
念願かなって、この世界最大の漢和辞典を手に入れたので、
早速、調査を再開してみた。
「泰」の字を調べると、「泰階」については前回紹介したとおりの説明なのだが、
その隣に「泰階六符」という語があり、「漢書」の注として、
泰階、三台也、毎台二星、凡六星
という例文が挙げてある。
「泰階は、三台なり」、これは決定的な手がかりになりそうだ。
続けて「大漢和」で「三台」を当たってみると、
星の名。紫微星を守る三つの星。(中略)一名、天柱。三能。泰階。
これだ!
紫微星というのは北極星のことなので、
「泰階」とは、北極星を守る三つの星のことだ。
三つの星といっても、さきほどの「漢書」には、
「毎台二星、凡六星」とあるから、
二つの星が連なった、三つのグループ(合計六星)ということになる。
一瞬、連星のことが頭をよぎったのだけれど、
肉眼で見える連星などないから、
ここはやはり、近接した二つの星、ということだろう。
果たして、そんな星が、しかも三グループも近くにあるのだろうか。
全天から探すとなったらお手上げだが、
幸い、「北極星を守る」というヒントがある。
北極星を守るといえば、北斗七星。
北斗七星といえば、大熊座。
縦になっているけれど、
左上が頭、左下が尾、背中から尾にかけてある柄杓形が、北斗七星だ。
犯人はこの中にいるに違いない。
もう一度、よく見る・・・
よく見る・・・よく見る・・・
いた!
なんだかショッピングカートみたいになったけど、
丸で囲ったのが、三台、すなわち「泰階」の正体に違いない。
邪魔な線を消してみよう。
こうしてみると、三つのグループ(上台、中台、下台)が、
等間隔でまっすぐに並んでいるのが、よく分かる。
なるほどこれなら、
「泰階が平らかなときは、五穀豊穣・・」という言い伝えが生じたのも、
頷ける。
紫微星(北極星)との位置関係を、俯瞰するとこうなる。
それにしても、昔の人は、
よくこういう微妙な星の位置関係とかを見つけるよな、、
と感心してしまう。
しかもこの六星は、すべて3~4等の平凡な明るさであり、
現代では想像もつかないぐらいの、
圧巻の星空を眺められたであろう古代において、
これらの平凡な明るさの星たちに、
特別な意味を持たせていたというのは、
驚き以外の何物でもない。
何はともあれ、今回の謎はこれで解けた。
また次の謎解きにチャレンジしてみたい。