少し前に書いた、「泰階(太階)」についての記事、
「諸橋大漢和」を手に入れたらもう一度調査し直そう、としていたのだけれど、
念願かなって、この世界最大の漢和辞典を手に入れたので、
早速、調査を再開してみた。
「泰」の字を調べると、「泰階」については前回紹介したとおりの説明なのだが、
その隣に「泰階六符」という語があり、「漢書」の注として、
泰階、三台也、毎台二星、凡六星
という例文が挙げてある。
「泰階は、三台なり」、これは決定的な手がかりになりそうだ。
続けて「大漢和」で「三台」を当たってみると、
星の名。紫微星を守る三つの星。(中略)一名、天柱。三能。泰階。
これだ!
紫微星というのは北極星のことなので、
「泰階」とは、北極星を守る三つの星のことだ。
三つの星といっても、さきほどの「漢書」には、
「毎台二星、凡六星」とあるから、
二つの星が連なった、三つのグループ(合計六星)ということになる。
一瞬、連星のことが頭をよぎったのだけれど、
肉眼で見える連星などないから、
ここはやはり、近接した二つの星、ということだろう。
果たして、そんな星が、しかも三グループも近くにあるのだろうか。
全天から探すとなったらお手上げだが、
幸い、「北極星を守る」というヒントがある。
北極星を守るといえば、北斗七星。
北斗七星といえば、大熊座。
![大熊座](https://i0.wp.com/ukiyobanare.com/wp-content/uploads/2016/07/bear.jpg?w=640&ssl=1)
縦になっているけれど、
左上が頭、左下が尾、背中から尾にかけてある柄杓形が、北斗七星だ。
犯人はこの中にいるに違いない。
もう一度、よく見る・・・
よく見る・・・よく見る・・・
![大熊座](https://i0.wp.com/ukiyobanare.com/wp-content/uploads/2016/07/bear2.jpg?w=640&ssl=1)
いた!
なんだかショッピングカートみたいになったけど、
丸で囲ったのが、三台、すなわち「泰階」の正体に違いない。
邪魔な線を消してみよう。
![大熊座](https://i0.wp.com/ukiyobanare.com/wp-content/uploads/2016/07/bear3.jpg?w=640&ssl=1)
こうしてみると、三つのグループ(上台、中台、下台)が、
等間隔でまっすぐに並んでいるのが、よく分かる。
なるほどこれなら、
「泰階が平らかなときは、五穀豊穣・・」という言い伝えが生じたのも、
頷ける。
紫微星(北極星)との位置関係を、俯瞰するとこうなる。
![北極星・北斗七星・三台](https://i0.wp.com/ukiyobanare.com/wp-content/uploads/2016/07/bear4.jpg?w=640&ssl=1)
それにしても、昔の人は、
よくこういう微妙な星の位置関係とかを見つけるよな、、
と感心してしまう。
しかもこの六星は、すべて3~4等の平凡な明るさであり、
現代では想像もつかないぐらいの、
圧巻の星空を眺められたであろう古代において、
これらの平凡な明るさの星たちに、
特別な意味を持たせていたというのは、
驚き以外の何物でもない。
何はともあれ、今回の謎はこれで解けた。
また次の謎解きにチャレンジしてみたい。