「語源随筆・江戸のかたきを長崎で」(楳垣 実)

 

「語源随筆」というのは、ズルくもあるが上手いネーミングで、

語源のようななかなか結論を断定できないものを、
学術論文風に書いても、それの正否は心もとないから、

だったらエッセイ風に気楽に語ってみよう、
というのがこの本のコンセプトなのだと思う。

元より正しい結論を出すことに主眼をおいていないから、
その分、脱線しつつ、あんな説やこんな説が紹介できるし、
読んでる側としては、それが楽しい。

ひょっとこ
いいなづけ
おてんば
うだつがあがらぬ
がめつい
ざっくばらん

など、普段その語源について気に留めたことなどなかったが、
言われてみれば謎かもしれない、、という語句を、
うまくピックアップしていると思う。

個人的に面白かったのは、「パリッと」(新しくて上等なさま)の説明で、

この語の語源は、昭和初期に不良少年たちが使ったことばで、
「立派」を逆にして、「パリッ」としたのだという。

ただ、オシャレの中心都市「パリ」と結び付けて考える人もいるらしいとのことで、

「その説の方がいかにも上品でよろしいが、
しかし由来を知っている以上、幻滅ではあるが、真相を伝える必要を感じた次第である。」

なんてくだりは、実に心憎い。