よく西洋かぶれの人が、
「日本にはカフェの文化がない」と嘆いたものだが、
代わりに居酒屋文化がある。
居酒屋というのは不思議な空間で、
仲間と訪れてもよいし、
「おやじの聖地」として一人でちびちびやるのも、
この上ない楽しみだったりする。
カウンターの隅っこで、本を片手に一杯、
というのは、最高の贅沢。
そういうときに読むのが、
酒や居酒屋に関する本であれば、なおさらである。
そこに理屈があったら、逆につまらなくなる。
冷静になりすぎてはダメで、
客観性も批判精神も不要、
居酒屋に溶け込んで純粋に酒を楽しむ。
このような本の著者に求められるのは、
批評家ではなく詩人としての資質であろう。
という意味では、今回紹介する本はハズレだ。
必要以上にあらゆることをパターン化しようとするなど、
居酒屋を楽しんでいるのではなく、
居酒屋を分析しているわけで、
それでも読む側がハハーンと納得・感心させられるものならまだしも、
どうでもいいことを、無理に分析しようとするから、
正直、シラける。
それでは居酒屋の隣の席で経済学の話をされるようなもので、
「空気を読めない」とはまさにこのこと。
最終的に面白ければ、読後感だけは悪くないものだが、
致命的なことに、面白くない。
これに尽きる。
そうすると、沖縄料理について触れておきながら、
泡盛については語らないとか、
どうしてもアラ探しのような読み方になってしまう。