言わずと知れたスピルバーグ監督の出世作。
たぶん、昔からテレビ放送とかで何度も観てるはずだけど、
あらためて鑑賞しようと思い、レンタルしてみた。
間違いなく原作&脚本(リチャード・マシスン)が秀逸なこともあって、
これは公開から40年以上経った今でも十分楽しめる傑作映画だろう。
まず冒頭のセンスがいい。
真っ暗闇にエンジンの音だけが聞こえて、
ぼんやりと壁に立てかけられた自転車が見えてくる。
それが次第に遠ざかるにつれ、
あぁこれは、ガレージから車がバックで発進したところなのだと気付く。
この聴覚→視覚→理解、というように感覚ごとに認知をズラす手法を、
いきなり冒頭からぶち込んでくるあたり、
当時25歳のスピルバーグはやはりタダ者ではない。
車が発進してからも、しばらくは運転席からの視点が続き、
主人公の顔はなかなか出てこない。
都会から砂漠へと入るのを、
カーラジオの電波が悪くなることで表現するなど、
「状況を映像で語らせる」のが小気味よい。
観てる側は、そのテンポの良さに、
あたかも自分がハイウェイをドライブしているかのうような気分になるその時に、
問題の巨大トラックが出現するのである。
ここから先はもはや説明するまでもないが、
高速道路で煽ったり煽られたりというのは、
日本でもよくある状況であって、
そう、この映画はモンスターやゾンビが登場するわけでもなく、
日常にある恐怖・理不尽さを徹底的に、しつこく描くことで、
底知れぬ怖さを表現することに成功しているのだろう。
途中のカフェで犯人捜しをする場面なんかは、
主人公の心理描写がうまくなされていて、
ただのアクション映画ではないことを示しているし、
ラストの2台の車が崖から落下するシーンなど、
(大袈裟だけれど)まさに芸術的な美しさだと思う。
巨大な鉄の塊が、轟音とともに迫ってくる・・・
特殊効果もCGもないが、
こういう映画こそ、最新設備の劇場で観てみたいと思わせてくれた。
適正価格(劇場換算):2,000円