仏教がキリスト教やイスラム教ほど広まらなかった理由のひとつとして、
聖書やコーランが持ち運び可能な「携帯サイズ」であったのに対し、
仏典は辞書何冊分にも相当するような、
膨大な量であったことが、挙げられる。
一般の人々が直接読めたかどうかはともかく、
その宗教のエッセンスは、
教典に凝縮されていることは間違いない。
我々は(我々でさえも)、
なぜか聖書に関する内容はそこそこ知っているものの、
仏典やコーランに関してはほとんど知らないに等しい。
かといって、それらを実際に繙くのは現実的ではない。
が、この本を読めばその問題は解決できる。
コーランと法華経の共通点とか、
パーリ仏典と大乗仏典の違いとか、
各教典同士の横の比較も随所でなされているので、
教典とはなにか、を俯瞰的に考察できる点でも意義があろう。
宗教を知ることは、文化を知ることでもある。
そして宗教を知るには、教典を知る必要がある。