年末にたまたま本屋で目に留まって買ったのだけれど、
ミステリー小説なんて読むのは、
記憶にないぐらい久しぶりかもしれない。
このジャンルにおける不朽の古典名作らしいので、
今更読みました、なんてのは気が引けるのも事実だが、
読んで後悔はしなかった。
主人公の死刑執行日から遡って、
タイムリミットの中で犯人捜しが行われる、
そして真犯人は実に意外な人だった、
と書くといかにも陳腐なようではあるが、
1940年前後の作品と考えれば上出来だと思う。
特に冒頭の、
夜の街が、デートに向かう恋人たちのウキウキ感で華やいでいる様子を、
「街の半分と半分とが落ち合っていた」
と表現するあたりなんかは、
文学作品としてもなかなか読み応えがある。
ストーリーも映画を観ているかのようにテンポよく展開するし、
登場人物や細かい設定も実にシンプルで理解しやすい。
このジャンルの本は読まないので比較はできないが、
評価が高いのも納得はできる。
ただ、欲をいえば「幻の女」の扱いがちょっと雑かなぁ。
最初に登場するだけで、文字通り雲隠れしてしまうわけだが、
その真相というのが、あまりひねりがない。
そうなった原因も謎だし。
時間をかけてこの読後感を味わうのであれば、
同ジャンルの映画を一本観る方が、
僕個人の好みには合っているのかもしれない。