タイトルと装幀だけ見ると、
いわゆる「トンデモ科学本」、
要はオカルトの類(たぐい)と勘違いしがちだが、
真面目な科学アンソロジー。
マーティン・リース、イアン・スチュアート、
ポール・C.W.・デイヴィスといった、
(たぶん)このブログでも紹介したことのある、
天文学、物理学、生物学、化学、心理学などの、
各ジャンルの第一線で活躍する学者たちが、
地球外生命の可能性について語った文章をまとめたものである。
アプローチの仕方はまさに十人十色で、
エイリアンを扱った映画の紹介で終わるようなものもあれば、
生物とは何か?という問題に、
かなり専門的に踏み込んだものもあり、
ちょうど昨日、
「系外惑星の発見」がノーベル物理学賞を受賞したこともあって、
今やSFだけではなく、学問として、
「エイリアン」の存在がクローズアップされていることを、
実感させてくれる。
この本の内容を含め、
「エイリアン」の可能性については、
おおよそ以下の論点に絞られると思っている。
1.生命はどのような条件で、どのようにして誕生するのか?
2.生物の進化のメカニズムは?
3.生命が存在する惑星をどのように見つけるのか?
4.あり得る生命の形態とは?
特に上記の「1」についてが何も分かっておらず、
かつ我々が利用できるサンプルは地球上の生物に限られるため、
すべては想像、もっとマシな言葉を選ぶなら、
「可能性」の話でしかない。
「2」についてはもはや自明だと思われるかもしれないが、
地球上のすべての生物に、
同じ進化のメカニズムが働いているという保証はなく、
また、進化を探究する手掛かりも、
化石やDNAといった状況証拠のみであり、
要するに、生命の誕生と進化についての、
実証を伴った説は皆無な状況なのである。
そんな状態の中で、上記「3」「4」といった、
地球外生命を探るという行為は、
本来は、犯人像がまったく不明のまま、
手さぐりで犯人を探す行為に等しいのではあるが、
しかし地球外生命のサンプルが一つでも見つかるならば、
すべての疑問が一気に解決することが大いに期待されるために、
とりあえずはまずは、
その最初のサンプルを血眼で探している、というのが現状だ。
ただ、ここでもひとつ問題がある。
地球から数百光年離れた惑星に、
どうやら生命がいるらしいということが分かったとして、
実地検証する手立てがないのだ。
速度に上限があるのは仕方がないにしても、
宇宙のスケールが、容易に惑星系間の通信・移動を許さない規模であることは、
果たして偶然なのか、それとも創造主?による作為なのか。
結局最後は、形而上的な問題になってしまうのかもしれない。
・・・やれやれ。