生命の誕生と進化についてのこれまでの常識に、
果敢に挑戦した、ユニークではあるが決して荒唐無稽ではない、
意欲的な著作。
著者の説を簡単にまとめると、
生命誕生に必要なアミノ酸は、
地球の「後期重爆撃期」の隕石衝突時の化学反応によって生じ、
そして海底深くに埋まったそれら物質が、
プレートテクトニクスにより沈み込む際に、
「生命個体」となる、というもの。
生命は、従来説のように海中ではなく、
海底深くで誕生したという点がポイントであり、
つまり水の存在は、生命誕生にとって必要条件ではあるが、
十分条件ではない、ということになる。
生物進化の原動力を、
地球全体のエントロピー増加分を調整するための、
低エントロピーの実現だとする点は、
まぁ、そうだと言えなくもないかな、という感じだが、
先に述べた生命誕生のシナリオを、
実際に装置を使って再現を試みている点にも、
大きな価値があると思っている。
生命誕生や進化のメカニズムを、
地球科学という視点で解釈し直したこの本は、
まさに科学の創造力の楽しさを味わわせてくれるだろう。