中世日記紀行集

言わずと知れた、室町時代の連歌師・宗祇。

彼が山口を出発し、
博多・大宰府などの福岡県北部を周遊、
36日間かけてまた山口へと戻る旅路を綴った紀行文。

宗祇は発句(五・七・五)だけでなく、
当然ながら和歌(五・七・五・七・七)の名人でもあるわけだが、

前者は人に頼まれたときなど、つまり「ハレ」、
後者はその時々の心情を吐露する、つまり「ケ」、

といった具合に使い分けているのが、
当時の発句と和歌の関係が窺えるようで興味深い。

作り込まれた名文というよりも、
さらりと書かれた中に、深い情緒や教養が滲み出ていて、

しかも道中はそれほど苦難があるわけではなく、
酒量もそれなりで、

宗祇とともに海風に当たりながら、
旅をしているかのような気分を味わえる。