「ん―日本語最後の謎に挑む―」(山口 謠司)

古典文法の授業で、例えば、

「あなり」というのは、元々は「あるなり」で、
それが「あんなり」となり、「ん」が欠落したものである

と習うが、

「あるなり」⇒「あんなり」は音便として説明が付くものの、
「あんなり」から「ん」が欠落する理由については、
よく分からない。

昔は「ん」を書かなかったのだ、と言われればそれまでだが、

ではなぜ書かなかったのか?
いつから書くようになったのか?
「ん」に該当する万葉仮名はあるのか?

などなど、「ん」について考えだすと、
色々な疑問が次々と出てくる。

この本は、そのような「ん」についての歴史と性質について、
やや専門的に解説した本で、

万葉仮名の甲類と乙類って何?
焼酎じゃないの?

っていう人には、あまりオススメできないかもしれない。

国語学的な話題に終始するわけではなく、
空海のくだりでは、仏教の歴史にも触れるなど、
知的好奇心を掻き立ててくれる。

実は僕の大学での専攻は、古代の日本語だったわけで、
この本に書かれているような内容の授業を受けていたのだが、

最終的には受講生は僕ひとりになり、
試験もレポートもなく、「A」をもらったのが懐かしい。
もう20年以上も前になるのか。