上巻が、投資の世界に入る前のギャンブルの話が中心だったのに対し、
下巻は全編投資のお話。
投資の世界に踏み出して、
順風満帆な状況で上巻は閉じられていたのだけれども、
下巻はいわば起承転結の「転」の部分からのスタートで、
ガサ入れだの、裏切りだの、イカサマだの、
成功者に必然的につきまとう、負の部分についてのエピソードから始まる。
ただ、この著者の強運と数学的能力には、
ネガティブ要素など、どうってことはなかったようで、
あらゆる苦難を乗り越え、
その先にはさらなる成功が待ち構えていたようだ。
読み終えて思ったことは、
確かに、著者はまぐれで成功を掴んだわけではなく、
あらゆる努力を惜しまなかったわけであるが、
かといって、他の人間が同じように努力すれば、
同じぐらい成功できるかというと、はなはだ疑問だということ。
つまり、著者が史上稀にみる強運の持ち主だったことは間違いなく、
また、投資で成功を収めた時代というかタイミングも、
ちょうどよかった。
ただ著者が素晴らしいことは、
自らの成功に奢ることなく、その要因を客観的に分析し、
それをでき得る限り(すべてではないと思うが)さらけだしていることと、
自らが大富豪になってもなお、
金持ちのいいなりになっている政府への批判や、
税金制度改革についての提言を行っている点。
何というか、非の打ちどころがないんだよなぁ。
著者のやり方を真似しろと言われても絶対できないし、
もはや偉人伝の領域。
どの分野においても、
常人では絶対に影すら踏めない境地に達することができる人がいるのだと、
ただただ、感服するしかなかった。