2018年のスウェーデン・デンマーク合作映画。
ノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソン(知らない)
の代表作が原作とのことで、道理で、深い。
いやぁー、キライじゃないです、
こういうディープなSF。
一時期、宇宙船が漂流していまい、
その中で生きる人々を描く作品が流行ったけれども、
この作品もそのひとつ。
環境破壊された地球を脱出し、
火星へ向けて、数千人の移民と共に、
3週間の旅に向かう巨大宇宙船アニアーラ号。
規模としても設備としても、
豪華客船というよりも、むしろショッピングモールというか、
もはや動く都市といった感じ。
しかし、出発してわずか1時間後、
映画でいうと、開始から10分後、
いきなり故障してしまい、動力を失ってしまう。
まぁ、かなり唐突な気はしますが、
良く言えば、テンポ感が大事ということで。。
要するに、宇宙船は制御不能となり、
船長は苦し紛れに、
2年以内にはどこかの星でスイング・バイをするから大丈夫、
と乗客に知らせるのだが、
火星まで3週間かかる程度の速度しかない宇宙船が、
わずか数年で他の星まで行けるはずもなく、
人々の間に、不安と絶望が拡がってゆく。
自殺者が増えたり、
カルト集団を結成したりする人々も増え始めた、
出発から5年後のこと、
謎の飛行物体がアニアーラ号に近づいてきて、
無事確保に成功するが、
期待されていた燃料の採取もできないことが分かり、
一時期生じた希望の光も、再び消えてしまう。
そんな中で、ヒロインのMRは、
他の乗客との友情や愛情を通じ、
懸命に生き抜こうとするのだが、
生きがいとしていた仕事や、
愛する人を失い、
自らが乗る宇宙船とともに、
絶望の彼方へと漂流を続けてゆく・・・。
ストーリーは以上の通りなのだが、
SFというよりも、ヒロインの生き様を描いた、
ドラマといった方がいいかもしれない。
途中、女性同士の痴情や、セクシャルなシーンもあるが、
基本的には、ヒロインの懸命に生きる姿に、
共感を覚えざるを得ない。
その前向きな生き方と、
絶対に助からない状況という絶望感とのバランスが、
この映画の見どころというか、
決して一本調子ではない、
深みを演出することに成功している。
500数万年後のラストシーンは、
やや蛇足かな、とも思ったけれど、
まさに「動く石棺」となった宇宙船に、
再び太陽光が注ぐという、
この映画のテーマでもある「光と闇」を、
象徴しているシーンなのかもしれない。
適正価格(劇場換算):1,800円