宮崎 正勝 著「知っておきたい『酒』の世界史 」(角川ソフィア文庫)
僕が思うに、
「酒の世界史」とは一種のトートロジーで、

なぜならば、世界史を形作ったのは酒であり、
酒がなければ歴史は存続しなかっただろう、
と思うからである。

本書は、文明史に沿って、
酒の歴史を下記のように明確に区分する。

1.狩猟・採集による「果実の醸造酒」の時代
2.農耕による「穀物の醸造酒」の時代
3.「蒸留酒」の時代
4.新旧大陸の交流による「混成酒」の時代
5.産業革命による「酒の大量生産」の時代
6.酒のグローバル化と「カクテル」の時代

こう眺めてみると、
やはり大きな転機となったのは、
3の「蒸留酒」の時代であり、

それが中国に端を発した、
錬金術・錬丹術をベースとし、

皮肉なことに、
飲酒が禁じられているイスラム世界で発明された蒸留器こそが、
その決定打であったことのくだりなどは、

酒好きとしては、
読んでいてワクワクさせられてしまう。

そのほか、
ジンやラム、ワインがここまで大衆化した理由も、

その背後の歴史と結びつけられることで、
さもありなん、と頷かれる。

グラスとともに、
人に蘊蓄を傾けるもよし、

独り酒を啜りながら、
ニヤニヤするもよし、

酒好きであれば、
是非とも知っておきたい知識が詰まった一冊である。