古典和歌を題材としたミステリーということで、
自分としては読まないわけにはいかなかった。
主人公は、製薬会社の新薬の実験により、
1900年代初頭の、
あの折口信夫の意識と同化することになる。
(この設定必要?)
以降は、折口を探偵役とし、
柿本人麻呂、猿丸太夫、
そしていろは歌を繋ぐ暗号を解読する、
という物語が展開される。
うーん、期待には遠く及ばず、
ズバリ、「中高生向け」というレベルかなぁ。。
今更触れるのも恥ずかしい、
例の梅原猛の『水底の歌』をベースとした、
柿本人麻呂=柿本猿=猿丸太夫
というナンセンスを前提としているのだけれども、
まぁそれはフィクションとして我慢できるにせよ、
人物の描き方とか、文章の練り込みとかが、
まるで薄ーーい、冷めたスープを、
長時間飲まされているような感じで、
正直、しんどかった。
折口もそうだけど、
南方熊楠や、挙句には東条英機まで、
意味もなく登場させ(リアリティを演出したつもりか?)、
そうかと思えば、折口が、
人麻呂と猿丸太夫の歌を見て、
どちらが人麻呂作か分からなかったり、
『新撰万葉集』のことを知らなかったり、
といった、
とてもあり得ない描写があるなど、
あまり言いたくはないけど、
フィクションも度を越えると、
「失礼」になるんじゃないかな。
この小説の肝である暗号についても、
種明かしはふーん、という感じで、
暗号を解いたことで明かされる秘密も、
別に暗号にする必要なくね?というレベルだし、
何から何まで残念なこと、この上ない。
なまじ専門分野ということもあり、
辛口でスミマセン。