列伝とはいっても、
一応は年代順に並んでいて、
この「列伝三」は、大まかにいえば、
漢帝国(前漢)がようやく軌道に乗ってきた頃、
呉楚七国の乱や、
匈奴らの周辺諸国との争いが生じた時代のものである。
印象的というか、かなり特徴的だったのが、
「扁鵲倉公列伝」で、
ここでは扁鵲(へんじゃく)らが行った、
医術について語られているのだが、
どのような症状をどのように見抜いたか、
そして患者がどうなったか、
という具体例が、
これでもかというぐらい延々と続く。
※具体例の部分は後世の加筆らしいが。
あとは何といっても、
「李将軍列伝」と「匈奴列伝」。
中島敦の『李陵』は、
このあたりをベースにしていると思うのだが、
李陵についての記述は、意外と少なく、
ここから想像力を膨らませて、
あそこまでの小説にした中島敦の才能には、
あらためて驚かされる。
ちなみに「李将軍列伝」で主に語られるのは、
李陵の祖父である「李広」についてである。
もうひとつ挙げるならば、
「司馬相如列伝」。
政治家や武将が多い列伝において、
司馬相如のような文章家が取り上げられるのは、
珍しいが、
美辞麗句を連ねた賦を引用した箇所が多く、
漢文訓み下し文として、
思わず声に出して読みたくなる。