藤井 貞和 著、「〈うた〉起源考」(青土社)

感想を一言で表すならば、
「ダマされた」。

このタイトルで、
4,000円を超える大著(?)、
しかもこの著者と出版社ということもあり、

和歌の起源を追究する、
堂々たる論考かと思いきや、

読んでいる途中で、
章と章との連続性のなさに不審をおぼえ、

調べてみると、
和歌に関する独立した文章を、
各章として寄せ集めただけのものだった。

そうなると、全31章というのも、
和歌の「三十一文字」になぞらえているのだろうが、
紙面とコストの無駄にしか思えず、

しかも、他人の論考の引用や、
和歌の現代語訳や感想が大部分を占める、
という内容では、

到底満足のゆく読書体験とはならなかった。

和歌という分野で、
いまさら目新しい学術的考察を行うことは、
難しいことは間違いないが、

であるからこそ、僕みたいに、
それを待ちわびてる読者もいるわけであって、

それを肩透かしにするようなこの本には、
心底がっかりさせられた。

内容については、敢えて触れまい。