遂にロジャー・ペンローズが物理学賞を受賞した、
今年のノーベル賞。
かつて文学賞を受賞した川端康成による、
「美しい日本の私」
という講演のタイトルは、
「美しい日本」の私、なのか、
美しい「日本の私」なのか、
あるいはその両方なのか、
という問題を孕んでいたわけだが、
大江健三郎による同記念講演のタイトル、
「あいまいな日本の私」
が、そのオマージュであり、
まさにタイトル自身により、
日本語の「あいまいさ」を、
さらに強調する効果を挙げていたことも、
一時期話題となった。
さて今回紹介する、
このドキュメンタリー映画のタイトルに関しては、
おそらくは、
「あまくない砂糖」の話、ではなく、
あまくない「砂糖の話」なのだろう。
(原題は「The Sugar Film」。2014年・豪)
コメディを基調にはしているが、
内容はそれなりにショッキング(「あまくない」)で、
ドキュメンタリーとしてのレベルは高い。
主人公は、できるだけ砂糖を避けた食生活を心がける、
健康的な男性。
砂糖による人体への悪影響を調査するために、
オーストラリア人の砂糖の1日の平均摂取量、
「スプーン40杯」をと摂る生活を2か月間続け、
それが自らの体に及ぼす変化を、
各方面の専門家と共に分析する、という内容だ。
スプーン40杯分の砂糖、というと、
ものすごい量のように感じるが、
ジャンクフードを食べるわけでもなく、
むしろ「健康的」というイメージの強い、
シリアルや乳製品、フルーツジュースなどによって、
砂糖・果糖を「自然に」摂取し続ける。
しかも、毎日適度な運動は欠かさないし、
どちらかといえば「健康的」な生活にも見える。
結果は、2か月間で、
体重はプラス8キロ、体脂肪はプラス7%、
さらには脂肪肝となり、
悪玉コレステロールも増える始末。
おまけに脳はより多くの糖分を求め続けるから、
精神状態も不安定になるし、肌も荒れるし、
もちろんメタボになるし、
絵に描いたような不健康体が出来上がった。
これがまさに、
コロナ太りな自分(現在はかなり解消)の、
人間ドックの結果と似たような状態だったわけで。
※さすがにここまでひどくはないが。
砂糖や果糖は、
太古の昔は貴重な栄養源だったが、
今では、あらゆる加工食品に含まれている。
それに人間の体が追い付いておらず、
まさに「毒」を、毎食摂り続けているというわけだ。
コカ・コーラやペプシという、
人間を「砂糖漬け」にしている企業を、
堂々と批判しているのも流石で、
要所要所で学者の意見なども挿みながら、
100%真実とは思わないが、
かなり説得力のある(特に僕にとっては)内容になっている。
映画の序盤で、
アイゼンハワー大統領が心臓を悪くした際に、
「脂肪が悪い派」と「砂糖が悪い派」とで、
科学者の見解が二分し、
「脂肪が悪い派」が勝ったことにより、
健康の指標はカロリー計算が主流となり、
砂糖・果糖は我が物顔にふるまってきた、
というエピソードや、
そもそも砂糖は、奴隷貿易による主流商品なわけで、
そこにはいまだに多大な利権が絡んでいるという話など、
「現代の闇」ともいえる事柄に、
鋭く突っ込んでいるなぁ、と感心。
こういう映画を観て、
食事や健康について考えることが、
そろそろ我々日本人にも必要なんじゃないかな。
適正価格(劇場換算):1,800円