カザルス、フルニエ、シュタルケル、ロストロポーヴィチ、
トルトゥリエ、マイスキー・・・
ピアニストやヴァイオリニストほどではないが、
数多くの名人が揃うチェリストの中で、
ヨーヨー・マは、特に好きでもない、
というか、そのアクの強さと、
おそらくアジア系だという偏見のせいもあって、
苦手なチェリストでもあった。
でもこの映画を観て、僕の評価はガラリと変わった。
言語、文化、民族、宗教、
そして政治的にも分断された「シルクロード」から集まる、
それぞれの楽器を持った音楽家達とのセッション。
音楽は元々どうであって、
どのように広まっていったのか、
それはそれで興味があるが、
でもそれはどうでもいい、
今ある様々な音楽たちをまとめることで、
世界はひとつになれるのではないか。
それを、パリ生まれの中国系アメリカ人で、
クラシック界の第一人者でもあるヨーヨー・マが先導することに、
価値がある。
音楽を主題とはしているものの、
この映画の伝えるテーマは重い。
シリア、イラン、中国、スペイン、
政治的に揺れる国々が多い中で、
音楽家たちは、何を思い、どう表現するのか。
音楽という共通言語によって、
グローバルなレヴェルでの意識を啓発するのが、
本来の目的なのだろうが、
僕もこの映画を観て初めて知ったぐらいなので、
まだまだ声は届かない。
現在、若者たちが叫んでいる、
「環境問題に対する大人の責任」については、
本来は、こういった音楽家達が、
セッションするより前に、
まずは率先して、意見を述べるべきだと思うのだけれども。
とあれかくあれ、
彼らのバンドの中に、三味線がなかったことは、
悲しくもあり、複雑な心境だな。