アレックス・パヴェージ 作「第八の探偵」(ハヤカワ・ミステリ文庫)
いわゆる「作中作」モノのミステリー。

登場人物は編集者と作家の二人で、
その作家の書いた、
七編からなるミステリー短編集について、

編集者がインタビューする形式で、
物語は進む。

インタビューとはいいながら、
編集者が作家の前で、
各短編を朗読するという儀式があるため、

我々読者も、
当然すべての短編を読むことになる。

この小説の特徴は、
推理小説に数学的定義を与えたことで、

具体的には、
探偵・被害者・容疑者・犯人といった要素が、
例えば犯人と探偵が同一人物の場合など、
どのように重なり合うか(数学でいう「集合」)を分類し、

作中の七つの短編はそれぞれ、
そのいずれかの分類の例として、
書かれていることになっている。
(ただし、各要素が一人なのかグループなのか、
全部が重なるのか一部が重なるのかなどにより、
分類パターン数は膨大になるため、
決して七パターンしかないわけではない)

編集者が短編を朗読後に、
その解説を作家が行う、という流れが、
七回繰り返されることになるわけだが、

次第に各短編内に潜む矛盾や、
作家自身の秘密が明らかになってゆき、

果たして、二人はどうなるのか、、
というのがこの作品の主眼である。

七つの短編は、
正直あまり出来が良いものではないし、

作家自身の秘密についても、
想定どおりというか、

全体をロジカルにしようとしすぎて、
かえって不自然になっているというか、

傑作ミステリーを読んだときのような、
「ゾクゾク感」のようなものがない。

まぁこの作品が初ではないはずだけれど、
各要素の関係をパターン化し、

推理小説とは何かについて、
それ自身の中で迫るという試みは、
キライじゃないけれど、

であればもっとその点を、
練り上げてほしかった。

なので全体的に中途半端、
というのが率直な感想かな。