いわゆる「作中作」モノのミステリー。
登場人物は編集者と作家の二人で、
その作家の書いた、
七編からなるミステリー短編集について、
編集者がインタビューする形式で、
物語は進む。
インタビューとはいいながら、
編集者が作家の前で、
各短編を朗読するという儀式があるため、
我々読者も、
当然すべての短編を読むことになる。
この小説の特徴は、
推理小説に数学的定義を与えたことで、
具体的には、
探偵・被害者・容疑者・犯人といった要素が、
例えば犯人と探偵が同一人物の場合など、
どのように重なり合うか(数学でいう「集合」)を分類し、
作中の七つの短編はそれぞれ、
そのいずれかの分類の例として、
書かれていることになっている。
(ただし、各要素が一人なのかグループなのか、
全部が重なるのか一部が重なるのかなどにより、
分類パターン数は膨大になるため、
決して七パターンしかないわけではない)
編集者が短編を朗読後に、
その解説を作家が行う、という流れが、
七回繰り返されることになるわけだが、
次第に各短編内に潜む矛盾や、
作家自身の秘密が明らかになってゆき、
果たして、二人はどうなるのか、、
というのがこの作品の主眼である。
七つの短編は、
正直あまり出来が良いものではないし、
作家自身の秘密についても、
想定どおりというか、
全体をロジカルにしようとしすぎて、
かえって不自然になっているというか、
傑作ミステリーを読んだときのような、
「ゾクゾク感」のようなものがない。
まぁこの作品が初ではないはずだけれど、
各要素の関係をパターン化し、
推理小説とは何かについて、
それ自身の中で迫るという試みは、
キライじゃないけれど、
であればもっとその点を、
練り上げてほしかった。
なので全体的に中途半端、
というのが率直な感想かな。