1936年生まれ、
高齢となった著者が、
自らの人生を振り返りつつ、
生と死、そして芸術などについて、
語ったエッセイ。
著者は、少年時代から、
ほとんど本を読まなかったという。
しかしそれは決してマイナスではなく、
「言葉を離れる」ことで、
逆に得られることも多く、
特に絵を描くという行為においては、
言葉は無用で、
肉体の感覚こそが重要だと語る。
また、著者には、
本以上に、人から学んだことが多かった。
三島由紀夫を始めとして、
黒澤明、寺山修司、
ベジャール、ラウシェンバーグ、
といった人々との出会いから、
いかに生きたインスピレーションや、
教訓を得たかが、
エピソードとして繰り返し描かれる。
最初は、
軽いエッセイのつもりで読み始めたのだが、
途中から著者の芸術感が濃く表れてきて、
そして最後は、人生論となる。
あんなに熱く芸術について語っていたのに、
最後は冷めたというか、
良い意味での諦観を帯びているのが、
印象深い。
私が背負っている自我を
私から下ろして身軽になりたいのです。
確かに自我が私を作り、
作品を創ってきました。
しかしそんな私の季節は
終わろうとしています。
言葉さえも私から
下りたがっているような気がします。