リュック・ペリノ 著「0番目の患者 逆説の医学史」(柏書房)
「0番目の患者」(ゼロ号患者)とは、
その病気における最初の患者、
という意味なのだが、

なぜ「1号患者」ではないのかといえば、

その患者の死亡後など、
あとになってから、
その患者が実は最初の症例だった、
ということが分かったケースだから、

というのが僕の理解。

要は、様々な病気や症状における、
最初(と思われる)事例を紹介した本で、

なぜそのような病気や怪我を起こしたのか、
そしてそれを知った医師は、
どのように対処したのか、

についてのエピソード集となっている。

ただ、ひとつひとつのエピソードは、
割と軽く読み進められるのだが、

著者による「あとがき」を読むと、
割と重い問題の存在が明らかになる。

たとえばそのうちのひとつは、
「診察」と「治療」の問題で、

誤診だったが治療がうまくいくケースもあれば、
その逆に、
診断は正しかったが治療が失敗したケースもあり、

つまり「ゼロ号患者」の背景には、
ハッピー・エンド以上にバッド・エンドの物語が、
潜んでいることになる。

その他にも、医師と患者の関係、
患者のプライバシーや遺族の心情、
医学界における競争など、
様々な問題が横たわっているのだが、

それは個々のエピソードを読むだけでは、
なかなか理解することはできない。

新型コロナウィルスの流行により、
我々一般人も、
医療について考える機会が増えてきた。

その一貫として、
この本を読んでみるのもよいだろう。