この本に説得力があるのは、
著者がウイルスの専門家であるとともに、
獣医であることだと思う。
どういうことかといえば、
本書でも再三触れられているとおり、
現在研究が進んでいるウイルスは、
ヒトの病気の原因になる、
いわば氷山の一角だけであり、
その他大部分のウイルスは、
動物に潜んでいる。
動物が宿主のうちは無害なウイルスが、
ヒトに感染したときに、
病気を起こす場合が厄介なのであり、
であれば、
動物に潜んでいるウイルスを知ることが、
将来のヒトの敵を知ることになる。
本書は、
動物におけるウイルスの解説に始まり、
DNAを改変し生物の進化の要因のひとつである、
レトロウイルスの説明へとつながってゆく。
この本を読むことで、
ウイルスの驚くべきメカニズムの一端を、
興味深く知ると同時に、
ウイルスとは、
決して無条件に恐れるべき存在ではなく、
ウイルスと共存することは、
生命としてのいわば「宿命」であり、
問題はいかに共存していくか、
ということを痛感させられる。
そして共存するためには、
まずは相手を知らねばならないのである。