任意の断面においては、
ナルホド、と思える箇所もあるのだけれど、
全体として見ると、
何が言いたいのか不明。
これが小説であれば、
奇しくもこの本で同様に紹介されている、
芥川の『文芸的な、余りに文芸的な』に書かれているような、
セザンヌ絵画にも喩えられるべき、
「純粋な小説」として享受できるのだが、
論考となると、
やはりロジカルで論旨が明瞭なことを、
第一とすべきだろう。
タイトルからは想像付かないが、
この本の主旨は、
「ブラックスボックス(不可視)化」。
要は、お札って単なる紙切れなのに、
紙切れ以上の価値があるのは、
「不可視化」だよね、
って言いたいようなのだけれど、
それは「不可視化」っていうよりも、
抽象化ってことかと。
本も単なる紙なのに、
そこには紙以上の価値があるから、
「不可視化」。
スマホは手のひらサイズの機械なのに、
色々すごいことができるから、
「不可視化」。
そもそも「不可視化」とすることに、
何の価値があるかも分からないのだが、
著者にとって理解不能なことに、
「不可視化」のレッテルを貼るばかりで、
で?というのが、
この本の感想です、はい。
挙げ句の果てには、
「あとがき」で、
「不可視化」とは中途半端なことである
というあらたな定義(?)を、
ぶち込んできたりして、
まぁ、落ち着け、と言いたい。
どうせなら、
「世の中はすべてブラックボックスなんだよ。
どうしてくれんだよ。お前らどうすんだよ?」
ぐらいのぶっ飛んだ内容にしてくれればイイのに、
今更、「お金はブラックボックスです」って言われても、
シラケるしかないわけで。