永田 希 著「書物と貨幣の五千年史」(集英社新書)
任意の断面においては、
ナルホド、と思える箇所もあるのだけれど、

全体として見ると、
何が言いたいのか不明。

これが小説であれば、
奇しくもこの本で同様に紹介されている、
芥川の『文芸的な、余りに文芸的な』に書かれているような、

セザンヌ絵画にも喩えられるべき、
「純粋な小説」として享受できるのだが、

論考となると、
やはりロジカルで論旨が明瞭なことを、
第一とすべきだろう。

タイトルからは想像付かないが、
この本の主旨は、
「ブラックスボックス(不可視)化」。

要は、お札って単なる紙切れなのに、
紙切れ以上の価値があるのは、
「不可視化」だよね、
って言いたいようなのだけれど、

それは「不可視化」っていうよりも、
抽象化ってことかと。

本も単なる紙なのに、
そこには紙以上の価値があるから、
「不可視化」。

スマホは手のひらサイズの機械なのに、
色々すごいことができるから、
「不可視化」。

そもそも「不可視化」とすることに、
何の価値があるかも分からないのだが、

著者にとって理解不能なことに、
「不可視化」のレッテルを貼るばかりで、

で?というのが、
この本の感想です、はい。

挙げ句の果てには、
「あとがき」で、

「不可視化」とは中途半端なことである

というあらたな定義(?)を、
ぶち込んできたりして、

まぁ、落ち着け、と言いたい。

どうせなら、

「世の中はすべてブラックボックスなんだよ。
どうしてくれんだよ。お前らどうすんだよ?」

ぐらいのぶっ飛んだ内容にしてくれればイイのに、

今更、「お金はブラックボックスです」って言われても、
シラケるしかないわけで。