アンドリュー・ポンチェン 著「THE UNIVERSE IN A BOX 箱の中の宇宙 あたらしい宇宙138億年の歴史」(ダイヤモンド社)
科学において、
コンピュータによるシミュレーションは、
如何なる意味・意義を持つのか、

をテーマにした本。

身近な天気予報の話から始まり、
ブラックホール、ダークマター、インフレーション、
といった天体物理学へと敷衍していき、

最後は、我々の宇宙自体が、
何ものかによるシミュレーションかもしれないという、
「シミュレーション仮説」へと踏み込んでゆく。

実験とシミュレーションは何が違うのか、
シミュレーションによって、
我々は何か新しい知識を得ることができるのか、

現代のコンピュータ科学にまつわる疑問について、
専門家以外にも分かりやすく、
具体例豊富に解説してくれている。

コンピュータの中で、
ブラックホールをプログラミングしたところで、

それは本物のブラックホールを作ったこととは、
程遠いどころか、何の関係もない。

すなわち、
シミュレーションとは「再現」することではなく、

何かを理解するための「手段」である、
ということを、
著者は明確に語っている。

特にプログラミングのように、
自分の世界に没頭しがちなものは、

実はそれは手段であるのに、
それ自体が目的であると、
勘違いしてしまいがちだ。

それはシミュレーションのみならず、
通常のビジネスにおいても、
普通に起こり得ることであるので、

科学に興味がない人にとっても、
この本は一読の価値があるだろう。

シミュレーションとは、
想像であり、創造でもあるが、

それがゴールではないことを、
常に忘れるべきではない。

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