道路工事の現場などで、
「幅員減少」
という看板をよく目にする。
これは漢字文化の良いところで、
「道幅が狭くなるぜ」
っていう意味だということは、
十分に分かる。
だが、「幅員」とは何なのか?
「幅」はともかく、
「員」とはなんぞや?
そんな疑問で夜も眠れなくなり、
調査を開始した。
まずは「日本国語大辞典 11巻」で、
「幅員」を引いてみると、
「『幅』ははば、
『員』はかずの意」
とズバリ説明したうえで、
江戸時代の文献を例示してある。
なんと、意外と古い漢語なのね。
そして森鴎外の『即興詩人』から、
こんなフレーズも引用している。
「我声の威力、その幅員は曲の末解に至りて
強さと大きさとを加へき」
要するに、声の音域というか、
サウンドの振れ幅のことを言っているわけで、
物理的な幅以外でも、
使うのか、、という驚きΣ(・□・;)。
ちなみに、その次に引用されている、
島尾敏雄の作品の例は、分かりやすい。
「幅員は車馬の往来のわりには広すぎ」
これがまさに、
現在使われている「道路の幅」に、
ぴったりの用例である。
さて、次は漢字そのものについて、
調べてみよう。
「幅」はともかく、
「員」が「数」を表すというのが、
やや違和感があるからだ。
おなじみ「諸橋大漢和」の巻二で、
「員」をたずねてみる。
するとなんと、一番最初に、
「かず」とあるではないか。
うーむ、、現代人の感覚からすると、
「構成員」とか「人員」とか、
「員」って、
「メンバー」みたいなもんかと思ってたら、
まずは「数」なのね。
「メンバー」の意としては、
第二義として、「かかり」「つかさ」とある、
これだろう。
『唐書』の用例として、
「太宗 不置員」
というのが挙げられている。
そのほか、
「多い」「まるい」「等しい」「まわり」「おとす」
などの意味もあり、
「員員」で「にわかに」って、
ことらしく、
「員」って意外にも、
かなりのマルチプレイヤー。
おそるべし。
想像を超えてたわ。
まぁ、こういうところが、
漢字の魅力でもあるわけだけど。