実験の目的とはただ1つである。
すなわち、仮説が正しいか否かを実証すること。
ただ多くの場合が、「仮説を立てた人=実験をする人」となるから、
その意味では、実験の目的とは、
「仮説が”正しい”ことを証明すること」と言い換えられる。
科学者にとって、新しい仮説を打ち立てて、
その正しさを実験によって証明することは、
運命を左右する出来事といってもいい。
だから当然、その実験は、
まさに執念としか言いようのないぐらいの気迫で行われ、
時としてそれは、周囲の人からすると狂気じみて見えることすらある。
この本ではそのような、まさに「鬼気迫る」、
かつ科学的に「エレガントな」実験を紹介しており、
そこには、ガリレオのピサの斜塔での落球実験、
ニュートンによるプリズムの実験、フーコーによる振り子の実験など、
もはや伝説ともいえる著名な実験が多く含まれており、
科学初心者にも十分楽しめる内容になっている。
その中でも僕が大好きなのは、キャヴェンディッシュによる実験で、
この大科学者が何の実験をしたのかというと、
驚くなかれ、地球の重さを計測することにチャレンジしたのである。
キャヴェンディッシュは18世紀の人だから、
その時代に地球の重さを計る精密な装置などあったはずがない。
いや、現代でさえも、そもそも地球の重さを計るにはどうすればよいのか、
想像するのも難しいのではないだろうか。
その難題を、このニュートンと並ぶイギリスの大科学者が、
「執念の実験」で成し遂げたのである。
果たしてどのような方法で、それを成し遂げたのか・・・
興味のある方は、ぜひこの本を読んでみてほしい
最後に、ジョージ・ウィルソンによる、
キャヴェンディッシュの伝記からこの大科学者を描写した部分を引用し、
終わりにしよう。
人格について言えば、彼は虚空(うつろ)であり、
彼は人を愛さなかった。彼は人を嫌わなかった。
彼は希望をもたなかった。彼は恐れなかった。
彼は他の人たちがするように何かを崇拝しなかった。