誰もが知ってるクリスチャン・ディオールの自叙伝。
原題は『CHRISTIAN DIOR ET MOI』だから、
直訳すれば「クリスチャン・ディオールと私」で、
こっちの方が内容にもマッチしているのだけれども、
なぜわざわざ別のタイトルを付けたのかは、
ちょっと分からない。
この本を読んで、一流になるためにはどうすればいいのかを感じ取ろう、
などと思うと失敗する。
ここに書かれてるのは、「エピソード」の繰り返しであって、
教訓的なものは一切書かれていない。
職人が自分の技術について言葉で説明できないのと同じで、
この本は一流の職人による輝かしくかつ苦労の多い歴史の記録であって、
そこから「何か」を読み取ってもらおうとは意図されていないのである。
だからちょっと厳しく言わせてもらえば、
「一流デザイナーになるまで」という邦題は、
的を射ていない。
この本はまさに原題通り、
「クリスチャン・ディオール」という職人と、
その人生を振り返る「私」との対比なのだから。
世の中の女性には(男性にも)、
「ディオール・ファン」は多いと思うけれども、
この本を読んで作品、いや商品に接してみると、
また違った印象を受けるかもしれない。