ネットを立ち上げてWikipediaで調べれば、
すぐに情報が取り出せる現代において、
「博物学」という言葉が死語になる日は近く、
もしかしたら博物館という存在自体さえが過去のものになる時が、
迫っているのかもしれない。
ローマのプリニウス先生に遡るまでもなく、
かつての我々にとって、
「博物学」というのは重要かつ魅力的なテーマであった。
「博物学」のピークは意外にも最近のことで、
ヴィクトリア朝時代から帝国主義の時代にかけて、
人々が産業革命で文明を追求する裏側で(そして文字通り主に地球の「裏側」で)、
新しい生命の「種」を追い求める人たちが、いた。
この本は、そんな人たちの生きざま、
言ってしまえば「博物学」に取り憑かれた人々の、
ある意味狂気的な行動を紹介するものであり、
生物学や進化学といった学問の進歩の舞台裏の物語である。
「新しい種」といっても、
それは偏狭な我々ヒトから見てのことで、
その生物にとっては発見されるずっと前からそこに生きていたわけなのに、
「新種」などと呼ばれるのは迷惑千万なことかもしれないのだが。