これだけ頻繁に本を買っていても、
既に持っている本をダブって買ってしまったのは、
おそらく2~3回程度。
そのうちの2冊は、澁澤龍彦なわけだけど、
やはり少年期に強烈なインパクトを受けた作家というのは、
40歳を過ぎた今でも、新鮮に読める。
だから、古本屋の片隅で埃をかぶっていたこの本を見つけたときは、
おそらく二冊目だろうな、、というようなことはどうでもよかった。
むしろ、レジで100円玉と引き換えにこの本を所有できたという事実の方が、
なんだか少し寂しい気がした。
巻末の解説によれば、この本の出版当時、
澁澤にしては、内容が軽すぎるというのと、編集者にほとんど書き直されたとかで、
ファンや関係者の間ではだいぶ物議を醸したということだが、
ただ、当時の澁澤はまだ36歳。
金に困って書いたとも言われている、週刊誌にでも連載されそうなこんなライトなエッセイも、
ファンとしては、作家の新たな一面が発見できたようで嬉しくもある。
内容はとにかく、快楽礼賛の一点張り。
相対的な幸福なんかよりも、絶対的な快楽を求めるこそが最高の人生であるとして、
快楽と共に生きた古今東西の人物伝を披露していくあたりは、
まさに澁澤節全開である。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を貧乏臭い詩と一笑に付し、
太宰や安吾などは、「なんとか横町」のみみっちいデカダンス文学だとこき下ろしたうえで、
理想的な快楽をとことん追求していくさまは、読んでいて痛快この上ない。
もちろん澁澤が書いたものなので、
「快楽」といっても、「性愛」の占める比率がかなりのものになっているわけだが。
あらためて読み直してみると、
澁澤龍彦を知らない人が、入門書として手に取ってみるにはちょうどよいのかもしれない。