1950年代、スターリン政権下の社会の闇部分を描いたミステリー小説を原作とした映画。
44人もの子供を虐殺する犯人と、犯人を追いつめる捜査官、
ストーリーも雰囲気も、「羊たちの沈黙」を彷彿とさせるのだけれども、
この作品の優れている点は、それを単なる血腥いミステリーにするのではなく、
ソ連社会の矛盾の中で生きる人々を通して描いているという点。
ハリウッド映画にあるような、米vsソ連という図式ではなく、
完全にソ連の社会にどっぷりと浸かった形になっている。
そこが重いし、暗い(良い意味で)。
この記事を書いているちょうど今日、
ディカプリオがオスカーを取った話題の「レヴェナント: 蘇えりし者」にも出演している、
主演のトム・ハーディの、いかにもソ連の将校といった風格はさすがだし、
脇を固める、ゲイリー・オールドマンやヴァンサン・カッセルも、
名優の名に恥じない安定の演技。
エグいシーンがあるわけでも、謎解き要素があるわけでもなく、
でも物語の世界観にズブズブと引きこまれていく感覚は、
最近の映画だと結構珍しいかもしれない。
久々に硬派なサスペンスを観たという印象。
そしてクレジットを見ると、これも製作がサー・リドリーなのか・・。
道理で隙がないのも、納得がいった。
適正価格:2,100円(劇場換算)