コーエン兄弟の代表作ともいえる「ファーゴ」を、
今更ながら鑑賞してみた。
アメリカの「町」に根付いた人々の間に起きた血腥い事件という意味では、
この後に同じくコーエン兄弟によって撮られ、
こちらもアカデミー賞を受賞した「ノーカントリー」によく似ている。
どちらの作品も、町の閉塞感を全面に出しているというか、
色んな意味で「アメリカ的」な作品であり、
ヨーロッパや日本ではこういう映画は撮れないんだろうな、と思う。
「ノーカントリー」の方は、
犯人に追われる恐怖をひたすらに描いていわけだけど、
「ファーゴ」の方は、イマイチ焦点が定まらない。
サスペンスにしては、登場人物の行動が衝動的過ぎて、
緻密さに欠ける気がするし、
そもそも事件の原因である主人公(?)の自動車セールスマンが、
なぜ金に困って、妻の誘拐狂言を企てたのかが、
最後までさっぱり分からない。
結局その狂言が発端で、
いくつもの殺人事件が連鎖して起きてしまうわけだけれど、
それぞれが因果関係でつながっているわけでもなく、
なんとなく猟奇的描写を並べたかのような印象が避けがたい。
ある意味、異常な登場人物だらけな中で、
事件解決に奔走する妊娠中の婦人警官を演じたフランシス・マクドーマンドが、
本作でアカデミー女優賞を受賞したというのは、
相対的な効果というか、唯一まともな人物として際立っていたこともあると思う。
(もちろん、演技は申し分なかったと思うけれど)
もう20年も前の作品なので、
当時としてはこれで良かったのかもしれないが、
今の時代、こんな中途半端な脚本だと、
ちょっと辛口な評価をせざるを得ないかな。
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