映画「ある天文学者の恋文」

 

イタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。

原題は「correspondence(文通)」なのだけれど、
この邦題には若干不満がある。

というのも、劇中で主人公は自分のことを、
「天体物理学者」だとしているシーンがあるからで、
「天体物理学者」と「天文学者」は、似ているようで全然違う。

譬えるなら「インド」と「インドネシア」ぐらい違う。

それはさておき、あらすじをざっくり説明すると、

老教授(ジェレミー・アイアンズ)と女子大生(オルガ・キュリレンコ)は、
愛人関係にあったが、突然教授が死んでしまう。

けれど、ヒロインの元には死んだはずの教授から、
次々にメールやビデオレターが届く。

真相を知りたくなったヒロインは、
教授が最後に旅立った思い出の地へと向かう・・・

というお話。

【良かった点】
・いかにもヨーロッパ映画らしい、
ハリウッドものにはないカメラワークが楽しめる。
・思い出の地(エジンバラ)の映像が美しい。
・オルガ・キュリレンコのヌードが拝める(笑)。

【悪かった点】
・ジジイと女子大生の愛人関係というのが、若干キモい。
・しかもジジイには妻も娘もいるので、イマイチ同情できない。
・教授はいかにも「天体物理学」っぽいことを語るのだけれど、
実は内容が軽薄すぎる。

でもって、とにかく一番悪かった点は、(以下ネタバレ)

死んでもヒロインの元に手紙が届いていたのは、
死ぬ前に、いつどんな手紙を出すのかを計算し、

さらに、死んでからもメールのやり取りによって、
方向性が決められるようなシステムを作ったから、ということなのだけれど、

まぁ、そのリアリティについてはさておき、
なんといっても、死んでからも愛人に付きまとって、他の男を作るな、とか、
どんだけ未練がましくてキモいジジイなんだよ!ということ。

しかもそれを、真面目なラブストーリーとして映画にされたもんだから、
観ている方に感動なんてあるわけない。

敢えて弁護をするのなら、
老人の生と性への執着を描いたってことなんだろうけれど、

だとしたらもう少し「みじめ」に表現してくれないと、
最後までカッコつけたジジイばかり見せられては、
とにかく拒絶反応が先行してしまう。

でもきっと、ジュゼッペ・トルナトーレのことだから、
あえて美しい映像と美しいヒロインによるラブストーリーとして描くことで、
老人の醜さを際立たせたに違いない、

と思えるぐらいまで許容範囲の広い方は、
試しに観てもいいのではないでしょうか。

適正価格(劇場換算):894円