言うまでもなく、文楽とは、
太夫、人形、三味線の三位一体による芸である。
けれど、その三つについてバランスよく解説し、
かつ、名作や名演の紹介をも備えた入門書は、案外少ない気がする。
この「文楽への道」は、太夫・三味線については必要最低限の説明にとどめ、
一般になかなか知る機会のない人形について、
特にかしらや人形使いの所作を、
図を用いて念入りに解説しているところに特徴がある。
普段、素浄瑠璃に慣れてしまうと、
どうしても人形については頭から離れてしまいがちなのであるが、
やはり義太夫節とは舞台芸術なのであり、
それを演じるのは人形、
すなわち人形のことを知らなければ、
義太夫について何も知らないのと同然であるとの感を強くしたとともに、
己の浅学に貴重な知識を与えてくれたこの本に感謝をしたい。