稲垣足穂の著作の中から、星や空に関するものを集めた小品集。
僕がタルホにハマったのは、中二~高一ぐらいのときで、
そのときの感覚を懐かしみながらこの本を手に取ってみたのだけれども、
やはり「一千一秒物語」あたりは、
オッサンになってすっかり錆びついてしまった僕の感受性には、
少々キツイ。
逆に、「僕の”ユリーカ”」のような、天体に関する学術的文章なんかは、
ちょうど個人的にこの分野が得意なこともあり、
十代の頃の理解を超えて接することができた。
もう長いこと本を読みまくってきて、
歳を重ねてからも、長く付き合っていきたい作家と、
そうでもない作家とがはっきりしてきているわけだけれども、
残念ながら、タルホは後者かな。
ただ彼の作品は、他とは比べようもないぐらいユニークなのであって、
そして僕の人格形成に、タルホが少しでも関わっているとするならば、
そこはためらわずに、ありがとうと言いたい。
ちなみに、その「僕の”ユリーカ”」の中には、
「ピカソよりもピカビア」という一節があるのだが、
僕ならばさらに、「ピカビアよりもピカイア」と続けたい。
我々の祖先を遡ると、
このナメクジのような小さな動物(ピカイア)に辿り着くということには、
おそらくタルホも喜んでくれることだろう。