「世界のタブー」(阿門 禮)

 

タブーとは少し違うが、
某都知事が、不適切な用語を使ったことで、
選挙で敗北したことは記憶に新しい。

その言葉自体に差別的な意味は全くないが、
コンテクスト次第では、不快であるととられかねない。

またここ数日話題になっている、
某スポーツ界もタブーの百貨店のような場所だ。

そもそも出自や育ちの異なる他者が集まれば、
程度の差こそあれ、そこには何らかの「タブー」が生まれるわけで、

それを国レベル、民族レベルで紹介するのが本書である。
(ちなみに、いま「人種レベル」と書こうとして、ためらった。
ひと昔前までは何ともなかった言葉が、いまでは差別ととられることが多い。
これはまた難しい問題だ。)

タブーを論じるということは、
すなわち文化を論じることになるわけで、
この本の守備範囲もなかなか広く、新書にしてはかなり「お得」な内容である。

「食のタブー」にある、なぜ『旧約聖書』では「反芻動物」を食してはいけないのか、
を論じた部分などは、動物の生理・生態も交えた仮説を紹介しており、なるほど、と思った。

巻末付録として「民族・人種蔑称一覧」というのもある。
これを深堀りするだけでも、一冊の本になるだろう。

しぐさや食や言葉など、
あらゆる角度から世界の文化を俯瞰した本としても、
オススメできる一冊だ。