『広辞苑』の編纂者として有名な新村出先生の、語源に関するエッセイ。
エッセイといってもかなり専門性の高い内容も含んでおり、
かといってガチガチに語源だけを取り上げるのでもなく、
文学や周辺の文化など、
著者の広い知識と教養を存分に味わえる内容となっており、
「語源趣味談」という本人にによるネーミングがまさにふさわしい。
個人的に特に興味深かったのは「浪雲」という言葉についてで、
なんと『万葉集』にも1例しかなく、
その後も使用された形跡がないらしいのであるが、
なんとも美しい言葉ではないか。
しかもその『万葉集』では「浪雲のうつくし妻」と詠まれているそうで、
このような貴重な語を教えてくれたこの本には感謝したい。
その他にも、植物や動物、食べ物の名前など、
誰でも知っているような身の回りの言葉について、
時には漢語等との比較をしながら、言葉の世界を縦横無尽に駆け巡る。
今年に入って『広辞苑』の第七版が出たことが話題になったが、
そちらも買ってみようかと、思い始めている。