最近のニュースによれば、地球から北極星迄の距離は、
従来考えられていたよりも、実は30%ほども近いのだという。

要するに、星までの距離を測る精度が、
アップしましたよ、ということ。

ではそもそも、星までの距離はどのようにして測るのか。

ものさしを当てるわけにはいかないので、
意外と話はややこしいのだ。

分かりやすいように、地上で考えてみよう。

自分の住んでいる部屋の、壁から壁までの距離。
これなら、メジャーで測れる。
あるいは、歩幅で測ることだってできる。

では、今いる場所から、ちょっと離れた高層ビルまでの距離は?
といわれると、途端に話は難しくなる。

手元からレーザー光線を発して高層ビルに当て、
それが戻ってくるまでの時間を計る、という方法がある。

ただ、街中の高層ビルまでの距離などでは、
光はほぼ一瞬で戻ってきてしまうため、
これは現実的な測定方法ではないだろう。

もしもビルの高さがわかっているのであれば、
ビルのてっぺんまでの角度を測定さえすれば、
あとはtangentで計算できる。

ではビルの高さが分からなかったらどうするか。

これはもうお手上げである。
ここで「仮定」が登場する。

たとえば、そのビルと似たような形状のビルの高さを知っていたとしたならば、
今回ターゲットにしているそのビルも、
同じ高さだと「仮定」するのだ。

そうすることで、ビルまでの距離は「推定」できる。

星までの距離に、話を戻そう。

星までの距離といっても、
近いか・ほどよく遠いか・遠いか、のレベルによって、
何パターンかの測定方法が存在する。

もちろん、近いほど精度は高くなる。

北極星は、300~400光年で、「ほどよく遠い」ぐらいなので、
一番メジャーな測定方法が採られている。

その方法は、星の光のスペクトルを分析することで、
その温度を「推定」し、
そしてその温度から星の実際の明るさを「推定」し、

最後に、その推定された実際の明るさと、
見かけ上の明るさの比較から、
どれぐら離れているかを「推定」するのである。

これだけで3回も「推定」という言葉を使った。
実際には計算を行うわけだけれども、
ぴったりとした値がはじき出せるわけではなく、
値は範囲でしか求まらない。

だから計算上は、その範囲の中で値を「推定」(仮定)するしかないのだ。

仮定値がひとつだけならまだしも、
それが3つも4つも登場するようだと、
計算しているうちにそのブレは馬鹿にできないぐらいになってくる。

今回のケースはまさにそれで、
今までは星のスペクトルの計測値の誤差が大きかったために、
最終的な値が30%もズレてしまっていたのである。
※もちろん今回の計測値も、
いくつかの仮定は含んでいるので、正確な数値という保障はない。

ここまでの話であれば、ふーん、ですむのだが、
北極星のような代表的な星でさえ、30%もズレていたのである。

もし他の星たちも、同じように、
いやそれ以上ズレていたのだとすると、
宇宙の年齢を考え直さなくてはならない、
という大問題が生じてくるのだ。

現在、宇宙の年齢は約130億歳と言われているが、
宇宙の果てには、それよりも古い星が見つかったりしていて、
いろいろと議論が分かれているところではある。

ただ、北極星までの距離すらも正確に測れないこの段階では、
宇宙論を覆すような、新説の発表があってもおかしくないのではないか。

僕は、そう思う。

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